このページでは内田ギターについて楽器と人を書いていく。まずは今までイベント用に作成されたカタログを元にして、内田ギターについて紹介する。
内田ギターとは-
Full Order:
形、材質、機能、またギターの命である音をも含めた全ての注文に応えられる。
Individually:
量産ギターが複数の人々の手で、通常は特定の個人にではなくマーケット(市場)に対し複数の楽器を作るのに対して、個人製作家が個人に対して個々の楽器を製作する。
Hand Crafted:
楽器を作るために機械は使用するが量産工場で用いられるテンプレート(型板)等によるならい加工ではなく、ひとつひとつのパーツをフリーハンドで製作するため、各部の寸法やデザインをその都度変えても加工時間には変わりがないため、オプショナルコストがかからない。文字通りハンドクラフトのための道具であるノミやカンナ等によるハンドツール加工が大半を占めているので各部の面取りや微妙なアールの仕上げ等が一体となり、全体の仕上がりに統一感が出ると共に手仕上げの良さを最大限に出すように心がけて製作されている。
Acoustic Guitar:
Guitarと言うと6弦の楽器を連想するが、7弦やそれ以上の楽器、例えばハープギターやティプル、またダブルネックやトリプルネック或いはそれ以上のもの。その他民族楽器をよりコンテンポラリーなものとしてイントネーション等の精度を上げて作ることも出来る。Guitarと言う概念を越えたものであってもUchida Guitarの持つノウハウを活かせるものであれば喜んで製作する。
内田光広プロフィール
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1952年 |
東京生まれ |
1972年 |
クラシックギター製作を中出敏彦氏に師事。
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1979年 |
河野ギター工房にて研修 (品質管理・修理)
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1980年 |
名古屋にて量産工場数社の品質管理・技術指導。
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1983年 |
渡独 (旧西ドイツ)。
BSAミュージカルインストゥルメンツにて弦楽器修理。
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1987年 |
渡英 (英国領 北アイルランド)。
Lowden Guitarsに技術部長として参加。
英国政府よりTeaching officer, Key workerの認定を受ける。
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1988年 |
1988年 Lowden Guitars工場長として多くのプロフェッショナルモデルの製作に参加。
(Pierre Bensusan, James Taylor, Bob Dylan, John Renbourn, Elvis Costello,
David Lindrey, Jackson Brownなど)
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1990年 |
7弦ギター(#9006)
(12月)Lowden Guitarsを退社。
オリジナルギター製作のため帰国。
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1991年 |
(10月)長野県高遠町に工房を開設。
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1992年 |
UN-C ceder top, jaca back & side Yoji Yamamoto(#9201)
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1993年 |
Concept #1(#9306)、Concept #2(#9308)
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1994年 |
24弦コンサートハープギター(#9410)
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1995年 |
U-tiple(#9501)、Mignon 12弦ギター(#9505)、30弦ダブルハープギター(#9506)
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1996年 |
Mandomignon(#9601)、ナイロン弦U-6(#9606)、U-6(#9607)、Nouveau Walnut(#9610)
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1997年 |
Mignon 18弦ハープギター(#9704)、オフセットサウンドホール(#9708)
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1998年 |
FS-HLC spruce top, maple side & back Sakai (#9805)
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1999年 |
二重表甲6弦ギター U-99(#9908)
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2000年 |
Piccolo(#001)、12弦ギター Millennium-Twelve(#003)、FShN-HLTBC Black Wood(#100)
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2001年 |
FShN-HLTC(#104)、(#105)
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2002年 |
N-HLTC(#118) |
*シリアルナンバー考察‥‥2000年からシリアルナンバーが3桁になる。これは2000年の00と製造された順番になるのだが、4桁でなく、3桁なのはこれからのち1年間に10本以上作られることがないことを意味している。実際に1999年は8本しか製作されていない。徐々に製作本数は少なくなっていき、最少は年4本で落ち着くものと見られている。この頃には価格も1本200万円くらいにはなるのだろう。
*シリアルナンバー考察 2 ‥‥#100からシリアルナンバーが通し番号になる。これだけではいつその楽器が作られたか分からないのだが、そこも内田さんの狙いとなっている。作家はこの場で、作品が調べられることを本当は良しとしていないのかも知れない。製作時期についても多少はミステリアスな部分があった方が面白いから。今までのシリアルナンバーでは大方その製作時期が分かったが、これからは難しくなるだろう。内田さんも今までのようにデータを出してくれないかも知れない。Player2000年11月号を読めば分かるが、内田さんは自分の生涯製作本数を350本くらいだろうと読んでいる。これは今の製作ペースを変えることなく、順調にいった場合である。内田さんは自分の死後、作品がどのように評価されるのかを考えながら製作している作家だと思う。そんな作家の作品だからこそ、我々も製作してもらう時期が来たら、あれこれと悩んでしまうのだ。
*製作本数考察 ‥‥内田さんは2003年2月の段階で、#122を製作されている。Acoustic Guitar Magazine 15(2003年2月27日発行)によると、70歳の時点で年2本のペースまで製作本数を減らしていく、とのこと。60歳までのこれから10年間は現在のペース年10本として、60歳以降、年1本くらいペースダウンしていくことを考えると、内田ギターを本気で手に入れたいと思っている人は2013年くらいまでにオーダーした方が賢明だろう。
年2本のペースになると1本400〜500万円の値が付く可能性があるが、ここまでいくと普通の人にはもう購入不可能だ。上述のムックには80歳(2032年)で、1本1,000万円と書かれてあるから、あながち年2本時に1本500万円は的はずれの推測とは言えまい。年4本製作で、1本200万円以上の値が付くまでには何とか手に入れるようにしたいものだ。年4本製作が2018年頃になるのではないかと推測する。繰り返すことになるが、自分が弾くために内田ギターを手に入れたい人は早めに購入された方が良い。
[2003年2月14日]
*製作本数考察2 ‥‥内田さんは2003年4月の段階で、#123を製作されている。2009年の予約状況をお訊きしたところ、6月分まで入っているとのことであった。ついでに2009年の予定製作本数をお訊きしたところ、6本の予定とのこと。2ヶ月前に、年4本製作が2018年頃と推測していたが、修正しないといけない。2011年には年5本製作になるとのことなので、年4本製作となるのは2018年より早い時期となる。ここでも繰り返さざるを得ないが、自分が弾くために内田ギターを手に入れたい人は早めに購入された方が良い。
[2003年4月14日]
*製作本数考察3 ‥‥内田家では昨年いづみさんが亡くなる不幸があり、ギター製作のあり方そのものを大きく見直すことになった。現在の注残と、2004年分の遅れも考えると2012年くらいを境に、製作本数が半減、或いはさらに少なくなっていくと推測される。自分のアイデアを投入した内田ギターを入手したいと考えている人で、ギターにかけられる金額に限りがある人にとってはあまり猶予がない。内田ギターが手に入れられるか否か。それくらいの時期になっていると思う。
[2005年1月1日]
ボディー形状
・U
ちょっと達磨に似た特徴あるボディ。平均的なスティールストリングスギターよりやや大型であるが、膝に抱えた時には大きさを感じさせないようにデザインされている。ボディ下部の横幅が広い(410mm)為、低音を出しやすいのが特徴である。
・UN
Uモデルの上下方向の長さは同じ(508mm)で、幅だけを20mm詰めてある。女性、小柄な人、または演奏性を優先したい人、ステージ専用でピックアップを取り付ける人に適している。
・F
フィンガーピッカー向けに考案した、より弾きやすいボディシェイプ。
・FN
Fモデルの上下方向の長さは同じ(510mm)で、幅だけを20mm詰めてある。
・FS
Fモデルの上下方向の長さは少し短く(495m)で、幅は10mm詰めてある。
・FSN
Fタイプで最も小さいボディシェイプ。
・M
トラディショナルな形を好む人に。
Martin社の000の角を丸くしたような小型なボディ。どの素材を選ぶかによっても異なるが、歌の伴奏にちょうど良い音量が確保できるように思う。
・N
レギュラースケールでUchida Guitar中、一番小さいボディ。Martin社の00の角を丸くしたような形で、気軽に家で楽しむのに適した小さなギター。
・C
スタンダードなクラシックギタータイプ。基本的にはナイロン弦用にデザインされているがスチール弦用にこの型を使用してもおもしろいギターができる。
・NO(Nouveau)
Art Nouveau(アールヌーボー)をコンセプトとした意欲作。外観の斬新さだけではなく、構造的に新しいアイデアが投入されている。
・NON(Nouveau Narrow)
Nouveau(ヌーボー)の幅だけを20mm詰めた仕様。ナイロン弦にはこのサイズを使う。
・K
マイケル・カーシャのアイデアを元にして作られたボディシェイプ。大型のクラシックギターである。全長がスティール弦と同じ。
・KN
Kの幅だけを20mm詰めた仕様。
・UM(U Mignon)
U-tipleを1995年1月に製作したのをきっかけにできた新しい型。6弦、12弦ギター等を今までに製作。ギターのスケールは480mmで、普通のスケールの5フレットにカポをはめたのと同じ弦長になっている。U-tipleの弦長は432mmでMartin社のTipleと同じにした。
・FM(F Mignon)
FタイプのMignon。
・P(Piccolo Guitar)
通常のギターより1オクターブ高いチューニング。ボディも小さい。ボディはスケールも含め、Fタイプの1/2の寸法である。
・ONE OFF
内田ギターの最大の特徴。ユーザーの希望に応じた一品製作なので、ボディー形状は上記のモールド(型)に拘らずに作ることが出来る。オーダーする人の好みの形で製作依頼できる。安田守彦の24弦コンサートハープギター、18弦ミニヨンハープギター、27弦テルツハープギターはONE OFF。U-tipleは内田さんがMignonシリーズのモールドを作るきっかけになったオーダーである。
内田ギターは工房を始めた時から「一品製作」にこだわっている。既存の形状にあてはまらない新しい楽器を生み出すことを誇りとし、イノベーターであり続けている。
あなたの夢を諦めることなく、ONE OFFのギターを内田ギターで実現しよう。
内田ギター寸法比較表 これらの数字は参考数値と考えた方が良いです。自分の夢を型にはめないように。
A=ボディの長さ、B=バスト、C=ウエスト、D=ヒップ 単位ミリメートル
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U
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UN
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F
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FN
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FS
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FSN
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M
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N
|
C
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NO
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NON
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K
|
KN
|
UM
|
FM
|
P
|
A
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508
|
508
|
510
|
510
|
495
|
495
|
491
|
485
|
490
|
480
|
480
|
508
|
508
|
352
|
352
|
255
|
B
|
280
|
260
|
292
|
272
|
282
|
262
|
290
|
260
|
283
|
275
|
255
|
296
|
276
|
200
|
210
|
146
|
C
|
260
|
240
|
|
|
|
|
242
|
216
|
244
|
|
|
|
|
|
|
|
D
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410
|
390
|
412
|
392
|
402
|
382
|
388
|
348
|
378
|
405
|
385
|
390
|
370
|
290
|
284
|
206
|
ボディーの厚み(深さ)
エンドピンの所で測って80~120mm。
Uchida GuitarではUモデルで110mm、UNモデルで100mmに設定しているがより深い響きやナチュラルなリバーブ感を、また豊かな低音を求める人はこれより5~10mm位厚目に、またタイトでレスポンス(音の立ち上がり)の良い音やより抱えやすいものを求める人はこれよりやや薄目に設定することもできる。
スケール
内田ギターのスタンダードは650mm。(スランテッドフレットの場合、6弦側は660mm、1弦側は650mm)音量のことを考えるとこのくらいは欲しいところであるが、手の小さい人や女性、またテンションを弱くして楽に指板上の指を動かすことに重点を置く人には630mmや640mmのスケールの楽器を製作する。
ミニヨンのスタンダードスケールは480mm。
トップ材
スプルース(松)とツェダー(杉)から選択可能
どちらも厳選され充分にシーズニングされた材を使用している。ギターに使用される木材は製材の後、キルン(Kiln)と呼ばれる窯に入れ含水率を12〜14%まで強制乾燥させるが、これは単に水分を抜くだけで、シーズニングはこの後少なくとも2〜3年は自然乾燥させこの間に内部の水分と樹脂が安定していく。Uchida Guitarに使われる木材は全て10年から20年寝かせてある。
*スプルース (アラスカ、カナダ)
通常ギター材として一番多く使われている材であり、音のバランスと深みのある音色を得るために優れた特性を持つ。弾き込むほどに鳴ってくる。スプルースにはいろいろな種類があるが、Uchida Guitarではシトカスプルースを採用している。
*ツェダー (カナダ)
ギター材として使われ始めたのはスプルースよりも歴史が浅く、当初スプルースの代用品の様に言われていたが、その比重の軽さから来るレスポンス(音の立ち上がり)の良さと小気味よい響きには捨てがたいものがある。新しい楽器でもすぐによく鳴り、ともするとうるさい位で、特徴のあるギターができる。音の深みという点ではスプルースに一歩譲るが、クラシックに対するフラメンコギターのような軽く爽やかな音を好む人には向いた素材である。
バック&サイド材
トップ(表甲)が振動体そのものであるのに対してその振動を受け止め、ボディ内での空気を支えるものとしてバック&サイド材をとらえる。そのためトップに使われる材は比重の軽い物だが、バック&サイドには比較的比重の重い物が使われる。比重の重い物ほど高い音の倍音が出て(増えて)豊かな音がする。逆に比重の軽い物はトップ同様に振動しやすく、トップの振動を受け止めると同時に自身も振動しやすいので、サスティーンに対しては不利だが、歯切れの良いはじける様な音が出しやすい傾向にある。
*ハカランダ (ブラジル)
ギター材として最高級とされ、事実とても高価な材料である。独特の美しい木目と黒に近い茶色からレンガ色のような赤や黄色いものまで多彩な色と木目が眼を楽しませてくれる。音質はその比重から高い音の倍音を多く含み、全体に豊かでより深く腰のある音が出せる。アクースティックギターフリークの間でも一番の関心を集める材であるが、音質的にもまた工芸的な見地からも一番贅沢な材だろう。
*ローズウッド (インド)
アクースティックギターのスタンダード。マイルドな音で高音から低音までのバランスが取りやすい材。
*マホガニー (ホンジュラス)
主にネックに使用されるが、サイド&バックにも向いている。これまで比較的低価格のギターに多く使用され誤解されやすいが、マホガニーにはマホガニーにしか出せない音がある。また、その黄金色に輝くような色が年月が経つ程に深いものになっていく。
*ウォルナット (ヨーロッパ)
パープルがかったグレーでとても美しい。ギターに用いられることは少ないが、木目にねじれがなく、素直な材。ローズウッドとマホガニーの中間的な音質。
*メイプル (ヨーロッパ)
白く木目にシルクのような輝きがあり、多彩な杢を見せる。艶があり、良く伸びる音。特に高音のきらびやかさが特筆に価する。Uchida Guitarでは本来ヴァイオリン族用に木取りされたメイプルをギター用に製材してもらい、質も外観も最高級のメイプルを使用している。
*コア (ハワイ)
マホガニーにもローズウッドにもない独特の音色を持つ。輝かしい高音に特徴があるだけでなく、低音も味わい深い。フィンガーピッキング奏者に向いている材だと思う。
他に用意されている材は、
*ウェンゲ (アフリカ)
黒い色をした導管の太い木である。Mタイプの6弦ギター、スピーカーボックス(#99)の横・裏で使用した。
*レースウッド (フィッシュテイル・オーク)
アクースティックギターの材としては珍しい。柔らかめの木ではあるが多くの繊維質を含んでおり、アクースティックギターにも向いていると思われたので使用した。他の材と比べると外見もかなり特徴がある。魚の尾に似た模様をしているからフィッシュテイル・オークとも言われる。ナイロン弦の12弦ギターの横・裏で使用した。
*上記以外でも興味のある素材があれば、内田さんに相談していただきたい。
比重比較表 「用途」のカッコ内は内田ギターではあまり採用されないが、不可能ではない。詳細は内田さんに問い合わせて欲しい。ウォーター、桐、バルサは理解しやすいよう、比較するための資料として載せている。
名称
|
原産地
|
用途
|
比重
|
アフリカンブラックウッド
|
アフリカ
|
バック&サイド
|
1.20 (1.28とのデータもあり)
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エボニー
|
アフリカ
|
ブリッジ、フィンガーボード
|
1.03
|
ウォーター
|
Earth
|
飲料・水泳などなど
|
1.00
|
ウェンゲ
|
アフリカ
|
バック&サイド、フィンガーボード
|
0.88
|
ハカランダ
|
ブラジル
|
バック&サイド、ブリッジ、フィンガーボード
|
0.87
|
ローズウッド
|
インド
|
バック&サイド、(ブリッジ、フィンガーボード)
|
0.82
|
メイプル
|
ヨーロッパ、(北米)
|
バック&サイド、(ネック)
|
0.69
|
コア
|
ハワイ
|
バック&サイド、(トップ)
|
0.67
|
ウォルナット
|
ヨーロッパ、(北米)
|
バック&サイド、(ネック)
|
0.64
|
マホガニー
|
ホンジュラス
|
ネック、バック&サイド
|
0.55
|
スプルース
|
カナダ、(ヨーロッパ)
|
トップ、(バック&サイド)
|
0.43
|
ツェダー
|
カナダ
|
トップ、(スパニッシュ・ツェダー : ネック)
|
0.38
|
桐
|
日本
|
和ダンス、(表板として使用する人が出てきた)
|
0.32
|
バルサ
|
プエルトリコ
|
模型飛行機
|
0.16
|
ブレーシング
音への影響が極めて大きい。
一つの胴型に一つのブレーシングが普通であるが内田ギターの場合はユーザーの希望する音に合わせて、ブレーシングを決定する。このブレーシングこそ内田ギターの豊かな鳴りを決定づけるもので極めて興味深い。これらブレーシングは全て写真などで見ることができ、他のギターのブレーシングと比較すると面白い。
バインディング&パーフリング
WoodまたはShell。ギター部品の中では珍しく音質に影響がない。ボディのエッジを守るためのもので、セルロイド製も多く見られるが、Uchida Guitarでは様々なカラーのWoodを用意しており、サイド&バック材とのマッチングで選べる。△ハカランダ(ブラウン)、△ローズ(ダークパープル)、△ウェンゲ(ダークブラウン)、△ウォルナット(パープルグレー)、△ペアー(ライトブラウン)、△パドゥック(レッド)、△メイプル(ホワイト)など
サウンドホール
サウンドホールのエッジ部はトップ材と同質の木を張り合わせた後、削り加工、サンディングが施される。クラシックの習慣である。二枚張り合わせるのは強度のため。一見トップは厚く見えるものの、厚いのはこの部分だけで、そこ以外のトップはその半分の厚さである。基本は真円であるが、Nouveau(ヌーボー)やミニヨンハープギターの様に特殊な形状にもできる。
ヘッド
・ソリッド 通常用いられるヘッドの裏から糸巻を取り付けるタイプ。
・スロット クラシックギターや古典的なタイプのヘッド横から糸巻を取り付けるタイプ。
・3D Three Dimension 3次元。ヘッド断面形状をへの字型にしたもの。ヘッドの強度が増し、低音に対して有利。
マシーンヘッド(ペグ。糸巻き)
*ゴトー 510
Uchida Guitarのスタンダード。現在、世界で最も高性能なマシーンヘッドの1つ。
*シャーラー
ゴトーと同様、Uchida Guitarのスタンダード。
*ウェーバリー
ソリッドタイプ、スロットタイプがあり、1940年代製ギターのイメージだが、精度は高く、雰囲気と実用性を兼ね備えている。
*ロジャース
世界の一級品。これ以上の工作美と精度の高い糸巻は他に類を見ない。ヴァージンブラスを素材とし、つまみは貝である。ソリッド、スロット、シングルユニット、3連ユニットがあり、またオリジナルデザインや木のつまみも特注できる。
非常に高価(実際にこの糸巻きの価格は中級クラスのギターが買える価格)であるにも拘わらず、多くの人がこの糸巻きの付いたUchida Guitarを望む。実際に使ってみると分かるのだが、使い勝手が非常によい。
*LSR
このペグはハープギター作成の時のみに使用。40:1の驚異的なギア比を誇る。チューニングが安定するのでとても重宝する。40:1なので、頻繁にチューニングを変更するスタイルの人には向かない。LSRは一度倒産し、入手が非常に困難である。現在はシャーラーが製造販売権を持っているようだが、まず日本の楽器店では見ることができない。
マシーンヘッド(ペグ。糸巻き)用つまみ
Uchida Guitarではマシーンヘッド用つまみも作ることができる。私のギターではU-99がハカランダつまみで、ミニヨンハープギターのギター部つまみはコアで作られている。オリジナルつまみの場合、普通はサイド&バックの材と同じ材で作ることが多い。エボニーの場合は市販のものが使われることが多い。
ネック(棹)
幅-ゼロフレット→44mm、12フレット→54mm
厚み(指板を含む)-1フレット→21mm、10フレット→23mm
上記がUchida Guitarのスタンダード。断面形状は下図のようなタマゴ型だが、幅、厚み、断面形状共にどのようなサイズでも製作可能。
・カマボコ型 クラシックギターに多い。ネック裏に常に親指を置く人に向いている。
・タマゴ型 タマゴの大きい方のRに近い形。Uchida Guitarのスタンダード。
・三角型 親指で6弦を押さえたり、ネックを握り込む人に向いている。
材質はホンジュラス・マホガニーがスタンダード。その他ウォルナットやメイプルでの製作も可能。最高級のセドロ(スパニッシュ・ツェダー)を在庫しているので、セドロでの製作も可能。特に軽いネックを希望する人には推薦する。クラシックギターでは最高級のギターにセドロは使用されている。ヘッドからヒールまでを1本の材で作る1ピース・ネック(1本棹)が主であるが、ネックのセンターにローズやエボニーをサンドイッチする3ピースや5ピース、クラシックギターのようなスカーフジョイントもできる。
ネック・ボリュート
ナット部の裏側にあるボリュートはクラシックの習慣である。ネックの強度をかせぐのが主目的であるが、美しい形状は芸術品としての価値を高めている。
フィンガーボード(指板)
耐久性、耐磨耗性ではエボニー(黒檀)が望ましいが、ネックを軽くしたい人、エボニーの黒が視覚的にきついと思われる人にはマッカーサー(縞黒檀)やハカランダも用意されている。
フィンガーボード・バインディング
Uchida Guitarではフィンガーボードと同じ素材でフィンガーボード・バインディングする。演奏性の向上が目的であるが、見た目も実に美しくなる。またバリができにくいのも長所の一つ。フィンガーボード以外の素材でバインディングすることも可能である。
サイドポジションマーク
自由に選択できる。白蝶貝を使うのがスタンダード。アバロンを使用したり、オパールを12フレットのみに施すこともできる。全て木でポジションマークを付けることも可能である。もちろん、ポジションマーク無しにすることもできる。
ブリッジ(駒)
スタンダードではハカランダを使用するが、エボニーも可能。
Uchida GuitarではLowdenやOvationで用いられているような弦を通すタイプの、ストリングピンを使用しないブリッジ。このブリッジの良い点はサドルと弦止めまでの角度が付けられるため芯のある音が出ること。弦の付け外しが簡単なこと。従来からあるピンタイプのブリッジも製作可能である。
置駒テールピース (Jazzタイプ)
古いジャズギターに多く見られるような駒を固定せずにテールピースを用いて弦のテンションで駒を押さえるタイプ。ちょっとドブロのようなファンキーな音が出せる。早弾きのジャズやコードストローク時の和音の一体感を好む人、または必要以上の残響を嫌うプレーヤーに向いている。
フィニッシュ
クリアラッカーを用いたサテンフィニッシュがスタンダード。木の質感を生かしたサラっとした手触りで、手入れが楽である。特に希望があれば艶有り仕上げも受けている。
ケース
内田ギターの料金にはハードケースが含まれる。
特殊なケースの場合はエクストラで料金がかかるが、ケースを作るのはまれである。オリジナルシェイプのギターも、大抵はケース内のクッションを加工、或いは追加することで、ケース内でギターが動くのを防いでいる。これで大事なギターを守ることが出来る。
カールトン等の特殊なケースも注文可能である。最近のメインケースはイギリス製 Hiscoxである。軽くて丈夫で、私は気に入っている。
オプション
☆スランテッドフレット
1弦から2、3弦と低音弦にいくに従って弦長が長くなり、フレットが指板のセンターに対して斜めに打たれたもの。5フレットのみが水平に打たれ、他のフレットは全て扇状のスランテッドになっている。より力強いベース音とタイトな高音がより容易に両立できる。また、5、6弦のテンションが上がるためにドロップD等の変則チューニングを多用する人に適している。演奏性についてはスランテッドだと言われなければ気が付かないほどで、何の問題もない。
現在、1弦から6弦が650mmから660mmの10mm差を基本として、ユーザーの好みのスランテッドフレットが製作可能。因みに私の24弦二重表甲ハープギター、6弦ギターのU-6、U-99は650mmから660mmの仕様。1弦から6弦が650mmから655mm(645mmから650mm等)の5mm差のスランテッドフレットも製作可能。この5mm差仕様だとほとんど普通のギターと同様に弾ける。
☆カッタウェイ
通常のカッタウェイも出来るが、Uchida Guitarではヒールレスカッタウェイを推奨している。ヒールがボディ内部に入っているのでハイポジションを演奏する際、演奏性が良い。重量増加もなく、強度に対しても考慮した設計になっている。ヒールレスカッタウェイは、数ある内田ギターオプションの中で、安田守彦が一押しでお勧めする内田ギターならではの演奏性を重視した仕様。通常のカッタウェイはネックブロックやヒールそのものが大きくなるためとかく重くなりがちだが、この点をうまく解消している。また、せっかくボディがカットされていても親指がネック裏から離れてしまうポジションではカッタウェイではない場合と大差がない。ヒールレスカッタウェイの場合、親指をネック裏に置いたままで20フレットまで楽に指が届くようになっている。
・バンクカッタウェイ
ヒールレスカッタウェイをさらに発展させたもの。この構造で24フレットまで運指が楽である。
・ツイステッドカッタウェイ
ボディ容量の減少を防ぐために考案されたカッタウェイ。
・ツイステッドバンクカッタウェイ
ツイステッドカッタウェイとバンクカッタウェイの長所を活かしたカッタウェイ。
・スプーンカッタウェイ
側板途中までの浅いカッタウェイ。ハイポジションのプレイアビリティー(演奏性)のことも考えながら、ボディ容量を落とさないように考えられたカッタウェイ。カッタウェイ部はムク材を削りだして作ったもの。
・エクストリームカッタウェイ
12フレットジョイントのギターでも24フレットまで指が届き、楽にハイポジションが演奏できるようになっている。オフセットサウンドホールの場合にこのカッタウェイになる。ナイロン弦ギターに適している。
☆サウンドコーン
サウンドホール周りの空気の流れを整流する。レスポンスが良くなり、音に指向性が出るのが特徴。裏板にネジ式で固定するので取り外したい時は容易に取り外せる。また、サウンドコーンの先は尖らすことも、丸みを帯びた仕上げにすることも可能である。
☆3Dホールリング
サウンドコーンとペアで相乗効果を発揮する。振動を逃がさないための補強。まずそのルックスに惹かれるが、音響効果も同時に考えるのが内田流。Nouveauで初めて採用した。
☆ビルトインアームレスト
肘の内側の圧迫を和らげる。
☆チェストレスト
板を曲げて嵌め込んだもの。胸のフィット感を良くする。
☆スラントバック
右胸があたる部分のバック材を曲げて、フィット感を良くする。表板の外見を普通のギターのように保ち、ビルトインアームレストの効果を持たせている。
☆オフセットサウンドホール
12フレットジョイントの楽器で特に有効。サウンドホールの大きさを変えずに6フレット側へサウンドホールを配置。これにより24フレットまで弾くことが出来る。特にナイロン弦で効果的。
☆24弦ハープギター用二重表甲(デュアルサウンドボード)構造
二重表甲にすることで表板の振動がベース用ブリッジで止められないようにした。つまりベース用ブリッジは表板ではなく、第二表甲で固定されている。
☆二重表甲(デュアルサウンドボード、サイドポート)構造
6弦ギターで用いられる。裏板から30mmくらいの場所に二つ目の表甲を設ける。二つ目の小さなサウンドホールは演奏者側にある。一つのボディから複雑な音の響を得ることに成功している。
☆二重表甲(デュアルサウンドボード、フロントポート)構造
6弦ギター、ハープギターで用いられる。裏板から30mmくらいの場所に二つ目の表甲を設ける。二つ目の小さなサウンドホールは第一表板にある。第一表板にある二つのサウンドホールから出る音にタイムラグが生じ、非常に複雑な響きとなる。
#100, #116, #122
☆二重表甲(センターデュアルサウンドボード)構造
6弦ギターで用いられる。裏板から30mmくらいの場所に二つ目の表甲を設ける。ここまでは今までの製作手法と同様。第二表甲のサウンドホールは第一表板のサウンドホールから見える場所に位置する。フロントポート、サイドポートはボディ内で音が混じることがないが、センターデュアルサウンドボード仕様はボディ内で音が融合し、非常に複雑な響きとなって、最後の出音を作り出す。
#119
☆二重表甲(ショルダートップデュアルサウンドボード)構造
6弦ギターで用いられる。裏板から30mmくらいの場所に二つ目の表甲を設ける。ここまでは今までの製作手法と同様。第二表甲のサウンドホールは第一表板の左肩に位置する。ボディ内で音が混じることがない。通常のデュアルサウンドボード・フロントポート仕様と異なり、ルックス面で、第二のサウンドホールの存在感を強く主張していない分、多くの人に受け入れられるデザインではないかと思う。尚、出音はショルダートップデュアルサウンドボードの方が、複雑である。
#121
今後新仕様、新オプションが発表されたら掲載する。
☆インレイ
ヘッドフェイス、表板周りのパーフリング、フィンガーボード、ブリッジなどに色々なカラーの木や貝などを使ってインレイができる。Uchida Guitarは極めて高度な技術を擁する。木や貝をメインに使用するが、特に様々な木の使い方が絶妙である。木を知り尽くした者のみが作りえる技だ。特に植物、鳥類のインレイを得意とする。
内田さんがインレイに、より興味を持つことになった本を下記に紹介する。
《The Art of Inlay》
Contemporary Design & Technique for Musical Instruments, Fine Woodworking
& Objects d'Art by Larry Robinson
Miller Freeman Books 1994
Larry Robinson
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